婦人科系

子宮筋腫について

漢方薬

漢方薬の入手方法
現在の日本では、東洋医学の専門家の診察を受けられる機会は、あまり多くはありません。漢方薬を試してみたい方には、まず、今かかっている病院で、「漢方薬を試してみたい」といってみることをおすすめします。というのも、子宮筋腫に対して用いられる処方の多くは健康保険適用のものなので、一般の産婦人科で処方を受けることができるのです。
しかし一部には、保険適用にならず、全額自己負担となるものもあります。


漢方薬は無害か

漢方薬は、もともと穏やかに効いていく薬ではありますが、副作用がないかというと、そうともいいきれないのが現実のところです。

まず、「瞑眩」といって、下痢や堰吐、発疹、発熱などの症状が、漢方薬を服用しはじめてからの数日間に生じることがあります。これは、いわば漢方の効果が急激にあらわれたもので、その後すみやかに消失しますので、あまり心配はいりません。


しかし、まれなことですが、漢方薬によって肝障害が生じることもあります。やはり、服用しはじめて、体調がすぐれなければ、すみやかに血液検査などのチェックを受けていただきたいと思います。
また、効果はあがっているけれど、胃に負担がかかっている、ということもあります。


漢方薬は食前に服用することが多いので、こういうことが起こりやすいのです。したがって、胃の調子が思わしくないと感じた場合は、たとえば服用する時間帯を、通常の食前から食後に変更すると、楽になることがあります。

子宮内膜症、子宮腺筋症 等乳腺症

子宮内膜組織が、本来の子宮内腔以外の場所で増殖する病気が子宮内膜症です。とくに
卵巣、腹膜、腸の表面などにできやすいといわれています。この内膜組織が子宮の筋層にできた場合を、とくに子宮腺筋症と呼びます。


子宮内腔の内膜組織は月経ごとに排出されますが、これらの場所で増殖した内膜組織に
は「はけ口」がないため、卵巣が腫れたり、腹腔内の癒着を起こしたり、あるいは、子宮が腫れ上がったりします。卵巣が子宮内膜症のために腫れると、チョコレートシロップのような液がたまるため、別名を「チョコレート嚢腫」ともいいます。
症状は、月経時の強い痛みが主体です。よく「脂汗が出るような」と表現されるよう
な激しい痛みを抑えるためには、鎮痛剤が必要となります。しかし、さらに進行すると、鎮痛剤も効かなくなってきます。また、病変が広がるにつれておなかの中の癒着が進み、
月経時以外の痛み(とくに性交時、排便時など)が出てきます。
この疾患は子宮筋腫と合併することも多く、子宮筋腫と診断された場合、この子宮内膜症、子宮腺筋症との合併があるかどうかの見きわめを行うことは、治療方針を決めるうえで、とても重要です。
というのも、もし手術を選ぶとしたら、その前に子宮内膜症に対して薬物治療を行って
おいたほうがよい場合があるのです。手術を選ばない場合でも、これらの病気との合併の有無によって、治療方針も異なってきます。

 

 


乳房も、子宮と同様にエストロゲンの影響を強く受ける器官のひとつです。
乳腺疾患の中でもっともポピュラーなのが、この乳腺症で、子宮筋腫をもつ女性によくみられます。三○~四○代の女性に多くみられ、乳腺に痛みを伴う「しこり」ができます。人によっては、脇の下まで腫れて、強い痛みを伴うこともあります。「しこり」のかたさや痛みは月経前に増し、月経がはじまると楽になることが多いとされています。
自分でもしこりがわかるので、「乳ガンでは?」とヒヤッとされる方もいるでしょうが、乳腺症自体は、子宮筋腫と同じく良性の病気です。ただ、乳ガンとの判別がむずかしい場合もありますし、たとえ乳腺症があっても、別のしこりがガンであることも考えられます。


また、しこりが急に大きくなることもありますので、乳腺症のある方は、定期的な経過
観察をかならず受けてください。

 

http://www.osakah.johas.go.jp/kakuka/nyusengeka/index.html

 

鎮痛剤

子宮筋腫の症状の中でも、とくにつらいのが月経時の痛みでしょう。痛みが強い場合には鎮痛剤を使用しますが、鎮痛剤の服用に際しては、いくつかのポイントがありますので説明していきましょう。
第一に、「からだに悪いから」という理由で、鎮痛剤を飲まないでがまんする方は非常に多いのですが、これはとても「損」な姿勢だと、理解してください。

というのも、痛みには、あるレベル(闘値)を越えてから鎮痛剤を服用しても、効果が出にくくなってしまうという特性があるからです。痛みをがまんしすぎて、苦痛にのたうちまわり、結局は鎮痛剤をたくさん服用し、なおかつ効きめが少ない、というのでは、なんにもなりません。こうした事態を避けるには、痛みがはじまったらすぐに鎮痛剤を服用することが重要です。
第二に、どの鎮痛剤をどれだけ使えば効果があるのかは、人によって異なります。強い痛みが起こったとき、どんな鎮痛剤が何錠くらい必要だったかを、毎回記録しておくと、自分の経過を判断するうえでの参考材料になります。


また、漢方薬や鍼治療などで、痛みをコントロールすることも可能です。


子宮筋腫の場合、見つかった時点でなんらかのつらい症状があれば、まず、その苦痛を取り除いたり、やわらげたりするための薬物療法を行います。このように、表面にあらわれた症状を軽減させるために行う治療法を「対症療法」といいます。
鋤痛みの治療や貧血の治療過多月経のために貧血をきたしている場合には、鉄剤を使います。
鉄剤は、通常は錠剤を内服しますが、吐き気や胃の痛みのために服用がむずかしいこともあります。このような場合、小児用の甘いシロップが便利かもしれません。それでも服用できない場合や、貧血が重症で内服では治療が困難な場合には、鉄剤の静脈注射を行います。

過多月経の場合、月経時に止血剤を服用することによって、ある程度、出血量を減らし、その結果として、貧血を起こしにくくすることができる場合もあります。止血剤を飲むと、月経の出血が止まって、その血液が子宮内にたまってしまうのではないかと、心配される患者さんがときどきありますが、あくまでも、出血の量を減らすだけですので、そのような心配はありません。

 

手術を選ぶ

また、手術を選ぶ場合には、子宮筋腫の筋腫の部分だけをくり抜く「核出術」と、子宮を全部摘出する「全摘術」とがあります。
手術を選ぶことは決まったとしても、貧血や子宮内膜症の合併があるかどうかで、手術前にそれらについての薬物治療が必要かどうかという差が出てきます。
紗ライフプランのなかでの位置付けは?


これらの選択肢のなかからどれを選択していくかに大きくかかわるのが、ライフプランとの関係です。結婚(あるいは離婚)、妊娠、仕事、子育て、老親の介護等、女性の人生に影響を与えるいろいろな要素が、子宮筋腫とのつきあい方を決めていくときにも問題となります。
「いついつまでは手術したくない」という場合があると思えば、逆に、「いついつまでには手術しておきたい」という場合もあります。


会合や宴会で、「このへんで一度『中締め子宮筋腫があると診断されたとき、いくつかの選択肢があります。そのなかからどれを選びとっていくかは、まさに「あなた次第」です。その選択肢とその周辺について整理してみましょう。


まず、手術しないで子宮をそのまま残すことを「温存」といいます。
この「温存」を選んだ場合でも、漢方薬やホルモン療法による薬物療法を選ぶかどうか、あるいは、日常生活に注意しながら定期的な経過観察だけにとどめるか、という選択肢があります。

子宮筋腫は「オトナの女」の病気

通常の超音波検査や内診では発見がむずかしいような、ごく小さい筋腫をもつ人も含めると、驚くことに三割ほどの女性が子宮筋腫をもっているものと考えられます。また、発見される年代のピークは四○代ですが、初潮年齢の低年齢化と閉経年齢の高齢化の影響を受け、発見年齢の幅も広くなってきています。

“増えている子宮筋腫
子宮筋腫の増大因子」であるエストロゲン分泌が、日本女性のからだにおいて増加しているために、子宮筋腫が増えているものと思われます。

 

基礎体温と性成熟期
卵巣の働きが順調であれば、排卵も定期的に起こります。そういう人が基礎体温をつければ、排卵の前後を境に、前半の二週間は体温が低く、後半の一一週間は高いという、きれいな二相性を示していることでしょう。
そのように、女性のからだの機能が安定している状態を「性成熟期」といいます。個人差はありますが、一○代後半から二○代のうちに成熟期が訪れ、それは四○代までつづきます。
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子宮筋腫は「オトナの女」の病気
性成熟期になって、卵巣の働きが順調になると、エストロゲンの分泌も盛んになり、月経周期が安定するようになります。それにつれて、小さくかたかった子宮は、エストロゲンの刺激を受けて、ゆっくりとその大きさとやわらかさを増していきます。
通常、この性成熟期に、子宮筋腫は発見されます。それは、子宮筋腫エストロゲンによって刺激され、大きくなるからです。
いいかえれば、子宮筋腫は成熟した女性の病気といえます。女性ホルモンの分泌が多い、「女盛りの」女性がかかる病気といってよいのです。


閉経後に発見されることも
閉経年齢についても個人差は大きく、四○代前半で閉経を迎える人があるかと思えば、
五○代の後半に入ってから閉経を迎える女性もいます。
性成熟期が終わり、閉経を迎えると、子宮は小さくなります。これは、卵巣からエストロゲンが分泌されなくなるからです。
女性のからだは一般に、このときに大きな変化の時期を迎えます。更年期障害は、その最たるもので、いろいろな症状が出て、つらい思いをする人も少なくありません。
ですが、子宮筋腫をもつ人の場合は、子宮が小さくなると同時に、筋腫も萎縮していくため、症状が楽になることが多いのです。

“小さくなる子宮筋腫
閉経すると、子宮筋腫がかなり小さくなることは、よく知られている事実です。
閉経前であっても、卵巣からのエストロゲン分泌が減ってくれば、エストロゲンによって増大してきた筋腫は、だんだん小さくなっていきます。
また、逆説的ないい方になりますが、子宮筋腫が小さくなってきたことが、閉経の前触れである場合も少なくありません。

妊娠初期に発見される場合

まったく症状はないのに、子宮筋腫と診断されることもあります。とくに「妊娠」ということがらに関連して、筋腫が発見されることは少なくありません。


妊娠の有無の診断は、まず、妊娠反応ではじまります。それが陽性ですと、次に超音波検査に進みますが、この時点で子宮筋腫が発見されることがあります。
妊娠すると、エストロゲンの分泌は急激に増加します。そのエストロゲンによる刺激に反応して、子宮筋腫は大きくなるわけですから、妊娠すると筋腫は急速に大きくなります。
ただし、大きくなる速度には、かなり個人差があります。そのため、これまでに超音波検査をしていて、子宮筋腫が発見されていなかった人が、突然「筋腫がありますね」といわれて、びっくりすることもあるようです。
しかし、妊娠の初期には子宮の壁の一部が厚くなることがあり、これと子宮筋腫との区別が、一度だけの診察ではつけられず、経過観察が必要なこともあります。命妊娠中期で突然見つかることも子宮筋腫がとても小さい場合、妊娠初期の超音波検査では発見されず、妊娠一五週から一一○週くらいになって突然発見されることも
あります。


とくに自覚症状はなく、この時期の定期検診での超音波検査で見つかることもありますが、おなかを触ると、やわらかめのしこりのようなものがあり、そのことに気づいて検査にこられる人もいます。
また、急におなかが痛くなって、診察を受けたら、その痛みの位置に子宮筋腫が発見された、という場合もあります。
’流産をきっかけとして「妊娠かな」と思っていたら、出血や下腹痛がはじまり、超音波検査をしてみると、受精卵の着床がうまくいかずに流産していた……。
そんなおりに、子宮筋腫が見つかることもあります。

 

鉄欠乏性貧血の確認

子宮筋腫が疑われる場合、まず最初に行われる血液検査が血算の検査です。血算とは血
球計算の略で、赤血球、白血球、ヘモグロピン(血色素)など、血液の主成分の数値のことをいいます。
「中年女性の貧血をみたら、子宮筋腫を疑え」というのが臨床医のセオリーのひとつになっているほど、子宮筋腫を原因とする鉄欠乏性貧血はよくみられます。

貧血の程度は、ヘモグロビンの数値により判断され、成人女性のヘモグロビンの正常値
は一二~一六g/jとされています。したがって、ヘモグロビンが一二以下になると、貧血と診断されます。
子宮筋腫があって、過多月経が長期間にわたってつづくと、ヘモグロビンが一○g/Ⅲ
以下になることも少なくありません。もっと重症になると、三~四g/Ⅲ台にまで下がることもあります。
血算の検査結果から、ヘモグロビン以外の項目の数値と照らし合わせ、貧血の原因を推
測することも可能です。子宮筋腫による貧血の場合は、顕著な「鉄欠乏性」のパターンを
とります。

 

子宮筋腫と、子宮内膜症や子宮腺筋症との合併が疑われる、とき、血液を採取して腫傷マ-カーを調べることがあります。この場合、本来は卵巣ガンの存在を調べるためのCAn‐5という腫傷マーカーを調べます。というのも、子宮内膜症や子宮腺筋症があると、卵巣ガンに比べれば低値ですが、腫傷マーカーの数値が上昇するからなのです。このマーカーが上昇していれば、子宮筋腫ではなくて子宮内膜症か子宮腺筋症である、あるいは子宮筋腫に後者が合併している、ということになります。

女性の卵巣の働きには非常に大きな個人差があります。そして、一般に、子宮筋腫のあ
る女性の卵巣はよく働いていて、エストロゲンがたくさん産生されるといわれています。
また、一人の女性の一生でも、年齢とともにエストロゲンの産生量は変化します。
更年期に入ると、エストロゲンの産生を促進するホルモンのLHとFSHが上昇し、や
がてエストロゲンが低下してきます。
「もうすぐ五○歳になるけれど、まだまだ月経は終わらないのかしら?」といった質問を、子宮筋腫をもつ患者さんから受けることがありますが、エストロゲン、LH、FSHという三つのデータをチェックすることによって、閉経の見通しをある程度立てることが可能になる場合もあります。