婦人科系

子宮筋腫について

筋腫が大きくなるのにはエストロゲンが関与します

これまでにわかっていることは、「子宮筋腫の発育(筋腫が大きくなる)には、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが深く関係している」という点です。このことはすでに多くの医学者たちが承認しています。


しかし、「なぜエストロゲンが深く関係していると考えるか」という根拠になると、研究者によってさまざまな見解の違いがみられます。いままでは、

子宮筋腫エストロゲンの分泌の盛んな性成熟期を中心にして発育し、閉経になると発育の停止や縮小をみせること。

エストロゲンが大量に分泌される妊娠中に、筋腫の増大傾向がみられること。

エストロゲン含有量の多かった昔使われていた(現在のものとは違う)ピルによって、筋腫の増大が起こったこと。

エストロゲンの分泌を抑える薬物療法によって筋腫の縮小がみられること。

などから、筋腫の発育にはエストロゲンが直接的に関与していると考えられてきました。そしてエストロゲンの量が筋腫の増大や縮小に影響を与えるものとして、重要視されてきました。
しかし近年の研究では、エストロゲンが直接にかかわるのではなく、子宮平滑筋の組織に存在するエストロゲンのレセプターが、筋腫の発育(細胞の増殖)に関係しているという新しい考え方が、まだ推定の段階ながら、有力視されています。
レセプターというのは、受容体(受け皿)のことで、エストロゲンがレセプターに影響を与え、レセプターの働きで筋腫が大きくなるというものです。この考え方だと、エストロゲンの量とともに、エストロゲンレセプターの量と質も影響してきます。

 

もう少し具体的に説明すると、子宮筋腫の発育には、直接には、細胞の増殖を促す増殖因子が作用しているとの考え方が近年出てきました。そしてエストロゲンは、これらの増殖因子の発現や産生を促したり、増殖因子の働きを増強する役目をしていると考えるわけです。

こうしたメカニズムで、筋腫が大きくなっていくものと推定しています。
また筋腫が大きくなるのには、エストロゲンだけでなく、プロゲステロン(黄体ホルモン)も重要な役割を担っていることが、最近究明されつつあります。プロゲステロン子宮筋腫核分裂を増加させるのではないかと考えられており、エストロゲンにはこのプロゲステロンレセプターを増量させる働きもあると推定されています。