婦人科系

子宮筋腫について

子宮の構造

子宮の下側(頚部)は陸とつながっていますが、上側(体部)はどこの臓器にもつながっていません。そして、子宮の背中側には直腸が、おなか側には勝眺があります。そのため、子宮に筋腫ができると、その位置や大きさによって、直腸や勝眺の圧迫症状が生じるわけです。
 子宮の正常な位置は、脳ページの図にあるとおりですが、洋梨のふくらんだ部分にあたる子宮体部が、おなか側に傾いている場合を 「前屈」、背中側に傾いている場合を「後屈」 といいます。この位置によって、筋腫ができ
 たときに圧迫される部位も異なってきますし、 月経痛や不妊といった症状に影響があらわれることもあります。
 子宮の大きさや位置は、内診や超音波(エコー)検査(↓P兇)によって知ることができます。

 また、子宮の内腔にゾンデ(消息子)と いわれる金属の棒を差し込むことによって、内腔の長さを知るとともに、子宮の位置(前屈・後屈)を確認することができます(これを「ゾンデ診」といいます)。子宮の内腔長は、七センチが正常値とされています。
 子宮筋腫があると、子宮が増大して、この内腔長が長くなっていきます。したがって、内腔長の経過を追うことで、子宮筋腫の状態を知る手がかりとすることができます。


卵巣とは 
卵巣は、赤ちゃんの卵をつくっている器官で、ホルモンの分泌と密接な関係にある臓器です。卵巣の大きさは、ほぼ手の親指の頭くらいで、卵巣固有靭帯というヒモ状のものによって、子宮の左右両側に連結されています。

 


卵管とは
 
 卵管は文字どおり、卵巣と子宮を結ぶ管です。子宮体部の左右にある卵管口は、両側に約一○センチも伸び、先端にあるいそぎんちやくのような卵管采で排卵された卵子を拾います。
 卵管がどこかでつまっていると、妊娠できなくなってしまいます。このようなことが起こる原因は、子宮筋腫による圧迫や、子宮内膜症による癒着、あるいは感染などによる炎症など、さまざまです。

「ホルモン・バランス」と子宮筋腫

エストロゲンの分泌量やレセプターの数には個人差があります。したがって、最初は同じように小さな「筋腫の芽」をもっていても、ある人はそのままで、ある人は大きくなっていく、ということが容易に起こりうるのです。
 

また、ある特定の人の筋腫が、あるとき急に大きくなることがあるのは、ストレスに関係があるようです。
 

エストロゲンとともに、筋腫を増大させるものとして、プロゲステロンの影響をあげることができます。エストロゲンプロゲステロンの分泌量は、脳下垂体と卵巣の間の相互関係で決定されます。月経が、さまざまなストレスに影響を受けることはよく知られていますが、これは、このエストロゲンプロゲステロン、そしてプロラクチンといった関連しあうホルモン間のバランスの変化が反映して起こることなのです。
 

子宮筋腫が急に大きくなるときも、ストレスが過重になっている場合がよくみられ、この「ホルモン・バランス」との関係の究明が待たれます。
子宮筋腫」という病名がついていても、その症状は各人によりさまざまです。子宮筋腫の症状は、筋腫と子宮内膜の位置関係に大きく左右されます。筋腫の大きさではなく、筋腫ができている位置により、その差が生じるところに、この病気の特徴があります。

今単発性と多発性


子宮筋腫は、通常は多発性です。多発性というのは、いろいろな場所に発生するという
ことで、子宮筋腫の場合でしたら、たいていの患者さんは複数の筋腫をもっているということになります。
しかし、産婦人科で、「○センチ大の筋腫が一個あります」というような説明を受けた人は、かなり多いはずで、これはこれで、誤りというわけでもありません。どちらが正しいというよりは、解釈の問題だと理解してください。
現実には、子宮筋腫がただひとつしかないことは、とてもめずらしいケースといえます
が、何個かある筋腫のうち、ひとつだけが大きくなり、あとのものは臨床的には問題にならない、数ミリほどの大きさにとどまっている、というケースは少なくないのです。しかも、検査ではっきりわからない、さらに小さな筋腫については、その存在を知ることができません。
女性ホルモンの分泌と女性の体調には、大きな関連があります。最初は数ミリ大だった子宮筋腫を大きくしていくのも、このホルモンの力によるものだといわれています。

 

心工ストロゲンと子宮筋腫
子宮筋腫の多くは三○~四○代の性成熟期に発見されます。年月とともに少しずつ大き
くなり、閉経の数年前から小さくなりはじめ、閉経するとかなり縮小することは、以前から知られていることです。
また、エストロゲンが大量につくられる妊娠中には、筋腫が急激に大きくなります。エ
ストロゲンを多量に含む高容量ピルを内服することによって、筋腫が増大することもあります。そこで、子宮筋腫の増大を招く主原因は、エストロゲンであるだろうということは以前から推測されており、現在ではそれが定説になっています。
近年ではエストロゲンそのものだけでなく、エストロゲン・レセプターが子宮筋腫の細胞内に存在していて、それが筋腫の増大に重要な役割を果たしているだろうと考えられています。

 

子宮の構造や働き

子宮と卵巣は女性特有の臓器です。子宮と、子宮に密接な関係のある卵巣についての知識は、子宮筋腫の検査、治療について理解するのに、欠かすことができません。では、このふたつの臓器の構造や働きについて、詳しく説明していきましょう。


今女性の肉体上の特徴

女性には、男性とは異なる肉体上の特性がありますが、性器の違いを除くと、子どものころは、その相違がさほど明らかではありません。
しかし、女性特有の臓器である卵巣と子宮は、生まれながらに存在していて、やがて活動する日をじっと待っています。
これらの臓器が本格的に活動をはじめるのは、いわゆる思春期、つまり初めての月経である初潮を迎える年代のことです。
そのころになると、卵巣による女性ホルモンの分泌がはじまり、胸がふくらんで、脇の下や外陰部の発毛もはじまります。こうした目に見える変化に伴い、おなかの中では、小さくかたかった子宮が、少しずつ大きくなり、やわらかみを増していきます。
そして、月経がはじまり、女性の一生はこの初潮とともに、生物学的にも社会的にもひとつの節目を迎えることになります。


子宮は、胎児を宿し、胎児を育てる大切な生殖器官で、平滑筋という筋肉でできた袋状の臓器です。その表面は紫膜という透明の膜に包まれ、袋の内側は内膜という膜でおおわれています。内膜は、さらに外側の筋層と接している基底層と、内側の機能層に分かれています。
この内側の機能層は、胎児を育てるための環境づくりを毎月行います。妊娠することなく、この環境が不要になったときに、機能層がはがれ落ちて排出されるのが、月経です。
この月経の周期が順調か否かは、女性のからだが健康な状態にあるかどうかのバロメータにもなります。


子宮の形や大きさは、やや小ぶりの洋梨に似ています。骨盤のいちばん底の部分に、さかさまになった洋梨が固定されていると考え
ていただければよいでしょう。

 

子宮を摘出しても女性は女性

先にも申しましたように、日本ではまだまだ「子宮をとってしまったら、女性ホルモンがなくなり、男のようになって、セックスもできないのじやないか」と思い込んでいるご夫婦が意外と多いのです。ここで正しい知識をお話ししておきましょう。
子宮筋腫で子宮をとる手術は、基本的には子宮だけを除去するのであって、卵巣は正常であれば極力残しますし、睦もそのままの状態で残ります。
女性ホルモンは子宮ではなく、卵巣でつくられるものなのです。
ですから子宮がなくなると、確かに月経は起こりませんが、卵巣は従来どおり働いて、女性ホルモンをつくりつづけ、女性らしさを守ってくれます。更年期障害が早くくることもありません。
特に子宮を全摘出するような場合は、いまなお「子宮がないと女でない」というような、まちがった考え方が、男女ともにまかりとおっている面があるので、そうした考えを払拭していただき、もちろん術後のセックスにも弊害がないことを知っていただきます。
ご主人が、病気をきちんと理解して、常に奥さんを励まし、支えているご夫婦の場合は、奥さんの精神状態も非常に安定していて、手術の経過もよく、回復が早いのです。
またたとえ、子宮筋腫の手術の際に両方の卵巣を摘出したとしても、人間の体はうまくできていて、少量ながら副腎が女性ホルモンを供給してくれます。また卵巣欠落症状が出た場合は、女性ホルモン剤漢方薬の投与で乗り切ることができますから、心配は無用と思ってください。


このことは手術後の生活のところでも再度ふれますが、しっかり申し上げておかなければなりませんね。
子宮筋腫で子宮をとり出す場合の手術法は、単純子宮全摘出術です。これは子宮がんのときの広汎性子宮全摘出術などと違って、子宮のみを摘出することですから、瞳は手術以前のまま残されるわけです。長さが短くなったり、狭くなったり、ゆるんだり、うるおわなくなったり……といったことは全くありません。したがって手術後のセックスにはなんの支障もありませんから、医師からGOサイ
ンが出たら、心配せずに再開なさってください。

 

 

 

 

 

 

 

卵巣腫傷

卵巣は茎状の組織により、子宮とつながっている。卵巣嚢腫で、この茎状の組織がなんらかの原因によってねじれた場合が、卵巣嚢腫の茎捻転と呼ばれるものだ。
茎状の組織(卵管、靭帯)がねじれると、その先にある腫傷(コブ)への血流が遮断され、血液が滞留する。やがて壊死状態になってゆくのである。
そこで激しい痛みを覚えるようになる。
鈍い下腹痛を訴えることもあるが、多くは強い痛みを訴える。このため、急性の虫垂炎(いわゆる盲腸炎)と間違えられることもしばしばある。
このように激痛を訴える茎捻転では、手術をすることになる。卵巣全体がうっ血によって真っ黒になっているような場合では嚢腫部分だけでなく、卵巣もいっしょにとってしまう。それほどひどくなければ、患部のみ除去し、正常な部分を残す核出術が適用できる。
卵巣除去の手術を行なっても悲観しなくてよい。片方の卵巣が残っていれば妊娠は可能であるし、現在妊娠中なら、妊娠継続ができるからだ。流産の心配もとくになく、無事出産することができる。
しかし、妊娠中(とくに妊娠末期)、大きいお腹にかくれて存在のわからなかった卵巣嚢腫が、出産後みつかることはめずらしくない。
子宮がカラになり、やがて収縮するとともに、卵巣嚢腫が活発に動きまわるようになる。このとき茎部の捻転を起こすことがある。だいたい産後五~六日を経過したあたりであり、まったく不意の痛みのため、とまどってしまう。
このような場合では、一刻を争って手術を行なわないと危険である。


卵巣嚢腫と腫傷の大きな特徴は、症状をみせにくい点にある。とくに初期にいたっては、まったくといってよいほど症状がないため、欧米では卵巣腫傷の別名を「沈黙の病気」と呼んでいるほどだ。
“ したがってどうしても発見が遅れ、手遅れとなることが少なくない。大部分は良性のものとはいいながら、悪性のガン化するものもないわけではない。

婦人科の検診の際などを利用し、早めの発見を心がけるべきである。自覚症状が出てからでは危険である。

 

内容物によって三種類に分類

袋状の病変と細胞増殖によるもの

 卵巣が大きくなる病気(卵巣腫癌)は、大きぐ「卵巣嚢胞」と「真性腫傷」に分けられ、子ども(ときには新生児にも)から高齢者まで幅広い年齢層にみられます。
 卵巣嚢胞とは、中に液体の入った袋のようなもので、その代表がチョコレート嚢胞です。卵巣に発生した子宮内膜と同じ組織が月経と同様の出血を起こし、その血液が卵巣にたまって嚢胞をつくります。
 卵巣嚢胞はすべて良性で、また直径一○m以上の大きさになることはまれです。
「真性腫傷」には、腫傷細胞が分泌した液体がたまって卵巣が大きくなった卵巣嚢腫と、腫傷細胞そのものが増殖して大きくなった充実性腫傷があります。卵巣嚢腫のほとんどは良性ですが、充実性腫傷では約七○%が悪性
で、その代表が卵巣がんです。卵巣腫揚全体でみると、ほぼ九○%が良性のもの、残りの一○%が悪性の腫傷です。

内容物によって三種類に分類
 卵巣嚢腫は、卵巣に発生する病変の八五%を占めています。その内容物によって、次の三種類に分類きれています。


・莱液性嚢腫 卵巣嚢腫全体の約一二○%を占め、嚢腫の内容物は、無色または淡い黄色をした透明のさらさらした液体です。大きさはさまざまですが、まれに成人の頭大ほどまで大きくなることがあります。

・粘液性嚢腫 内容物は白色または黄色、褐色のねばりけのある粘液です。ときに五煙を超えるような巨大な腫傷に発育することがあります。嚢腫が破れると、内容物の粘液が腹腔内に流れ出し、臓器の癒着を引き起こした
り、腸閉塞の原因になることもあります。

・成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢胞腫) 若い女性や、ときに小児にもみられます。内容物には毛髪、皮脂腺、汗腺、軟骨、歯などが混じっていることがあり、どろどろとした粥状の脂肪で満たされています。妊娠中に発見される
ことの多い卵巣嚢腫です。